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2021-02-13Filter |
漉きの話 その1

革の厚みの管理はとても重要です。
厚みのある革をスライスして薄くすることを「漉き(すき)」といいます。

例えば財布をつくるとして、
表の革は全体に何ミリで、縫い目の手前からコバまでを更に薄く何ミリに斜めに漉いて、内側の革は何ミリでコバ付近は何ミリ、重なるパーツは何ミリ・・・と勘案します。
多数の革が重なる小物の場合、耐久性との兼ね合いもありますが、
「たくさん重なる部分だからそのままでは厚くなりすぎる、でも重なっていないところと全く同じ厚みは逆に違和感があるから合計で0.4mm増やそう」なんて試算して、調和のとれた美しい品物を目指します。

また、漉きによってパーツの「強弱」も定義します。
曲がって欲しいところだけ薄くすると、革は自然にそこで曲がります。
もう少し繊細な例では、鞄の胴体がマチに負けると不細工だけど、胴の張り感を決定付けるためにはマチからのわずかな影響が必要、なんて場合は、胴の革とマチの革、それぞれの厚みの差で強弱を付けます。
いろいろな要素が、漉きでコントロールできるのです。

話は逸れますが・・・
「この製品は革が厚いから高級!」という言説が稀にありますが、それは間違った認識です。
厚くしたいならいくらでもできます。しかし良い品物にはなりません。
小物の場合、パーツによっては元々の革の厚みの5分の1くらいの厚みに漉くこともあります。
厚い革を薄くして使うことで上品な品物に仕上げる訳です。
一方で、厚い革を使ってこそのふくよかな表情と頑丈さは確かにあります。それは高級といえますが、仕立てによります。
重要なのは調和のとれた美しさと耐久性で、それを実現させるべく漉きの加減を検討します。

ちなみに革全体にスライスすることを「割り」(関東では割り漉き、関西では漉き割り)
パーツ全てをスライスすることを「ベタ漉き」
一部をスライスすることを「漉き」と呼ばれます。

続きます。

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