今春、定番に加わったダレスバッグ。

パンパンに張った革の緊張感をお楽しみいただきたい鞄です。
厚いブライドルをそのまま使い、鞄自体のサイズも大きめなので、かなりの存在感があります。
内から外へ膨張するエネルギーをどうにか抑えているようなフォルム。擬音で表すと「ドーン!」「バーン!」といった感じの鞄です。
見た目に反して、型紙は繊細です。
試作ひとつめはアイディア盛り込みすぎて不自然な形で、革に無理をさせるベクトルを検討。
各部が相互に影響して全体のフォルムをつくるので、どこか一箇所を直して解決するものではなく、微妙な修正を繰り返しました。
長く燻らせていた、いくつかのアイディアを形にすることができました。
意匠的な部分だけでなく耐久性を考えても有効な仕立てです。




革には伸縮性があり、計算上のあるべき寸法で組み立てても豊かな品物にはなりません。
革でものをつくる大切な要素のひとつが、寸法の矛盾をコントロールすることだと思います。どこをどれくらい矛盾させるかは計算では出せず、試作を繰り返すしかありません。つくり手の思いを乗せる作業とも言えます。
この鞄は、寸法の矛盾を全方位に起こさせることで、経年変化も見越した美しさを得ています。
大好きな口枠鞄。
革鞄ラバーの皆様にも、きっとお楽しみいただけるかと思います。
ぜひ工房でご覧ください。