茶利八方(チャリハッポウ)とは
植物の渋で鞣された山羊革「茶利革」に、
縦横斜めからの手揉み「八方揉み」を繰り返し行い、
革の表面を隆起させることで深い凹凸を生ませた革です。
多くの工程を人の手で行なっているため、技術を持った職人にしかつくる事ができないそうです。
日本独自の希少な革で、非常に美しい革です。
私が革を始めたときにはすでに途絶えてしまっていて「昔はこんなに凄い革があったのか」とずっと憧れを抱いておりました。
あるとき、復活させた方が居るという噂を耳にしました。
茶利革の歴史
明治三年、鞣し産業では遅れていた日本。
大村益次郎らのすすめによって「製革・製靴の伝習所及び御用製造所」が開かれ、
皮革技師として第一人者であったアメリカのチャールス・ヘンニンケルを一年間招き、西洋の鞣しが日本に伝わりました。
明治三年は製革業にとっても、同年の日本の国旗「日の丸」の制定とともに黎明を覚える奇しき記念すべき年であった。
日本の皮革 1969年著
その後生まれた革は、チャールス氏の愛称 チャーリーをとって「茶利(チャリ)革」と呼ばれ、
さらに八方向から手揉みを施した「茶利八方」が生まれました。
余談ながら・・・
奈良時代〜江戸時代の間に培われた日本オリジナルの革文化。
馬の脳みそでの鞣しや、姫路白鞣し、甲州印伝、エイ革を使った武具の仕立てなど、西洋には無い文化があります。
仕立てにおいても、江戸後期の縫製技法には目を見張るものがありますし、ロストテクノロジーもたくさんあります・・・
明治維新から数年間、西洋の文化がダムの決壊の如く、凄まじい流れで入ってきました。
和と洋の混沌とした時代。そのあたりに興味があります。研究していきたい分野です。
茶利八方について。
茶利八方を復刻された方を知って、すぐに伺いました。
ご挨拶して、早速、革を拝見。
迫力と気品とが同居する美しい革。まさに憧れていた革です。
仕入れの場で気になる革はいつも、端っこを手で揉んで判断するのですが、
このときはしばらく手が離せませんでした。
鞣して、染めた後、手揉みと天日干しを繰り返すことで、シボの詰まった革にしていくそうです。
元々小さい山羊革が、揉みと乾燥で20%以上縮むとのこと。
薬品で縮ませたシボ革やタイコで回した革とは違う、手揉みならではの凄みが際立っています。
大興奮のままお話していると、「当時の革をご覧になりますか?」と別室に通され、大昔の茶利八方革を見せてくださいました。
「これが本物の茶利八方。私たちが教材にしている、一枚しか残っていない革です。うちには昔、この革の製造に携わっていた職人が居て、現代の染料と技術で、この美しさを目指しています」とのこと。そこから一時間程お話を伺いました。
印象に残ったのはこの一言。
「チャーリーさんから教わったから茶利革だと聞きました」
「うん。でも、教わったそのままの革ではないんだよ。その後も努力を続けて産み出した、日本人の美意識が表れた革だと思います」
・・・しびれました!
ghoeの茶利八方
まずは見本代わりに定番品を仕立てました。
実際に品物として、立体になると、より手揉みの凄みが引き立ちますね。この革に限らず、もっと革の良さを引き出せるよう精進していきたいです。
ぜひご覧ください。オーダーもお待ちしております。