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2017-12-04Filter |
本藍染革 indaco 誕生秘話

本藍染革indaco、徳島県内よりも県外の方からの御注文をずいぶん多くいただいております。
革や仕立てについて、直接ご説明させていただきたい思いはあるのですが、対面でないとなかなかお伝えしきれません。
工房にお越しの方からは開発途中の話を聞かれることも多いので、今回は indaco 製品化までの紆余曲折?右往左往?を振り返ります。

2つの条件

まず、藍染革の開発に取り組むにあたって、以下の2つの条件を設定しました。

① 藍染革ならではの質感であること

藍染だから良いでしょう、というのではなく、
藍染革ならではの美しさが得られなければならない、と考えました。

② 年月を経て、より良い状態になること

良い状態で長い期間お使いいただけるもの、経年変化が楽しめるものでなければならない。
美しく、使い込む楽しみが得られるもの。革と藍とが高いレベルで融合すべきだと考えました。

藍染後の処理について

藍染革を製品化するにあたり「本職の藍染屋さんに染めていただき、ghoeで後処理を行う」
という大まかな流れは当初より決めていました。

革を藍染した場合、藍染後の処理はとても重要です。
染めに関しては、数回の試行で、きっちりと仕上げていただいたので、残された課題はこの後処理の方法でした。

藍液はアルカリ性。phを中和して、油分を加え、揉み込む必要があるのです。
ここから、後処理に関して様々な方法を繰り返し試すこととなります。

実験を繰り返す

実験を始めてすぐ、当初掲げた2つの条件のうち「藍染革ならではの質感であること」については比較的クリアし易いことに気付きました。そもそも「藍染」というものが、現代では特異な染色技法であるため、普通には無い質感を得やすいのです。

しかしもうひとつの「年月を経て、より良い状態になること」という条件で苦しむことになります。
藍染は細かい藍の粒子を素材の上に乗せる染色。使用による色落ちは避けられません。

また、素材として使いたいのは「トスカーナ産のタンニン鞣し革」。
ギン面の状態や繊維の詰まり具合が素晴らしい革ですが、激しい経年変化を見せるため、藍染革としては色濃く変化しすぎる懸念がありました。

数種類を染めていただき試しに使用していると、藍色は落ちていき、革は色濃く変色するため、半年ほどの使用で「使い込んだヌメ革」といった色味に…。
これではどちらの条件も満たしていません。

革の変更や、色止めのコーティング、いやいっそのこと天然の本藍染でなく薬品を使った簡易的な藍染ではどうだろう…。
様々な可能性を検討しましたが、目的は「革と藍との高いレベルでの融合」。紆余曲折を経て、「革は変更しない」「質感を阻害するため、コーティングは行わない」「阿波藍・天然灰汁発酵建て本藍染にこだわる」そして「可能な限り濃い染色であるべきだ」と結論付けました。

indacoの完成

これ以上ないほど濃く染めていただいた革に、
考え得る限りの後処理法を試し、「これだ!」という方程式を見出しました。

試しに使ってみると、実に綺麗に変化していくこともわかりました。
色濃く染めたことで藍色が抜けてしまう心配もなく、その上嬉しいことに、特殊な後処理によって藍染特有の風合いが更に増すことに気が付きました。
「経年を経てより良くなる素材」という条件をクリアするために編み出した方程式が「藍染革ならではの質感」についても思わぬプラスの作用をもたらしていたのです。嬉しい誤算、これはラッキーでした!

こうして独特の革が生まれました。室内では黒と見間違うほど「濃い藍色」
和紙や絹織物のような上品さを持ちながら、存在感もグッと出ている、迫力ある革に仕上がりました。
物としては間違いなく良い。

しかし、藍染と聞いて一般にイメージされるであろう「青さ」からは遠く、理解してもらいにくいかもしれないという薄い不安もありました。

そんな時、ある常連さんがふらっと工房にお立ち寄りくださいました。
何気なく置いてあった藍染革の試作品を見て「田岡さん、これは凄い!」とその場で御注文くださいました。
きちんと伝わったことに勇気づけられたことを鮮明に覚えております。
発表から一年半が経った今、全国各地の方々にお使いいただけて、本当にありがたく思っております。

余談ながら、後処理は未だに緊張します。
藍染屋さんから染め上がりの連絡があると大急ぎで引き取りに行き、ph計測器とオイルとその他の薬剤を手に、緊張感を持って仕上げております。揉み込みの作業は冬でも汗だくです…笑

最後に

最後に、関東のお客様からのお写真を掲載させていただきます。
「質感とデザインに感動しました。一生大切に使おうと思います」と大変ありがたいお言葉と共にお送りくださいました。

ghoeの本藍染革indaco、玄人向けの革ですが、良い革です。
最高級の革と阿波藍ならではの色味・質感をたくさんの方に知ってもらいたい。
出来れば、手にとって直にご覧いただきたいです。
お近くにお住いの方は、ぜひ一度工房まで足をお運びくださいませ。

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